MA篇


MAとは?

MA室 MA(Multi Audio)とは編集で出来上がった「MA前完パケ」に音を付ける作業の事です。
TV番組や映画を見ていて音に意識をおくと、様々な音が重なって出来上がっている事に気付くと思います。音楽、SE(Sound Effect、鳥の声や波の音などの現実音やシンセサイザーなどで作られた効果音)、ナレーションなど映像に付いている全ての音がこのMAで処理されます。
 
録音にはDAW(Digital Audio Workstation)MTR(Multi Track Recorder)という機材が使用され、これらは24や48など、多数の「トラック」を持っています。「トラック」とは音を記録する場所の事で、例えばステレオで録音できる機材は、LとR(2つの音を同時に記録、再生できるので)2つの「トラック」を持っていることになります。
 
DAWはコンピュータベースで、音をハードディスク上の「トラック」に収録する機材であり、MTRは音をカセットテープやビデオテープの様な「磁気テープ」上の「トラック」に収録する機材ですが、最近ではDAWを使用する方が一般的となりつつあります(コンピュータ上で作業できるため、音を切って短くしたりつないで長くしたり、様々な効果をかけたりするのが簡単だからです)。
 
DAW
MTR
DAW (Digital Audio Workstation)
MTR (Multi Track Recorder)

映像に合わせて音を付けていくので、VTRの映像を見ながら作業をします。このとき映像用のVTRと音用のDAWがずれないように「テープロックシステム」(シンクロナイザーともいいます)という機材でコントロールしながら、映像のタイミングに合わせて、前述の音楽、SE、ナレーションなどを、DAWのそれぞれ別トラックに録音していきます。
こうしてそれぞれのトラックに収録されたいくつもの音素材を、様々な処理を施しながら、「ミキサー」という機材を使って1つにまとめていきます。(概念図〜下記参照)
 
ミキサー
テープロックシステム
ミキサー
テープロックシステム

通常作業は2人ないし1人で行います。
2人で行う場合は「ミキサー」「アシスタント」と呼ばれる2人で作業されます。
 
Nさん Hさん
ミキサーとアシスタント
今日ミキサー
Nさん
今日のアシスタント
Hさん

「ミキサー」はミキサーを使って音を録音し、映像に合うようにレベルを調節したり、様々な加工を施したりします。作業の芸術的側面を担っていて、責任者でもあります。 
シンクロナイザーを操作するアシスタント 「アシスタント」はミキサー以外の全ての機材を扱います。主にシンクロナイザーを操作し、VTRとDAWやMTRをコントロールして音を付ける場所の頭出しをしたりします。作業の技術的側面を担っていて、アシスタントの作業スピードがMA作業全体のスピードを決めるといっても過言ではありません。  

MAを大きく分けると以下のような作業に分かれます。

1.起こし
2.音入れ
3.ナレーション録り
4.MIX
5.戻し

それでは順番に見ていきましょう。


起こし

これはお客様が来て作業が始まる前に行います。編集して出来上がった「MA前完パケ」(編集篇参照)の映像をMA作業用のVTRに、音をDAWやMTRにダビングします。

ダビングされた音は、音量も音質もバラバラで必要の無い音も入っているので、「ミキサー」は作品の内容と最終的な出来上がりを経験で予想しながら整理(音量、音質をそろえて、必要の無い音を消す)しておきます。

またこのとき作品を見ながら、その内容や音に関して気が付いたところなどをメモしておきます。これによって後の作業を効率よく進めることができます。

これでお客様を迎えて作業を行う準備が出来ました。  


音入れ

お客様がいらっしゃいました。作業の説明があった後、音効(音響効果)さんを待ちます。音効さんは、音楽やSE(効果音)など様々な音素材を所有しており、事前に「MA前完パケ」を見て必要な音楽や効果音を選んできます。 音効さんを打ち合わせ

ディレクターと音効さんの
打ち合わせ

いろいろなメディア
音効さんが来ると、音入れ作業の開始です。音素材はCDやDAT 、あるいは6ミリと呼ばれるオープンデッキ用のテープなどで持ちこまれます。時にはハードディスクやMOで持ちこまれることもあります。
いろいろな音素材のメディア
(左から6mm、DAT、MTR用8mm、CD)


「アシスタント」がシンクロナイザーを操作して映像を見せながら、音効さんがタイミングよくCDや6ミリをスタートさせて音楽やSEなどをDAWやMTRに録音していきます。

また、シンクロナイザーを使用することによってCDや6ミリを自動的に動かし、音を付けたい場所に正確に付けることもできます。
この時「ミキサー」は後で説明する「MIX」にむけて、作品の内容を考えながら、どの様にMIXするかのプランをたてます。

音入れ

全ての音楽やSEなどが入れ終わると音入れ終了です。次のナレーション録りのため、ナレーターさんを待ちます。


ナレ−ション録り

「ナレーター」とはナレーションを読む人のことで、時にはタレントやアニメなどの声優もナレーターとして来ることがあります。 
マイク位置調整をするミキサー
ナレーターは、お客様から配られたナレーション原稿に目を通し、お客様(ディレクター)と打ち合わせしながら言葉の読み方やアクセントなどを確認し、内容を把握していきます。
ナレーションは、防音の施された専用の部屋、「ナレーションブース」で収録します。「ミキサー」はうまくナレーションが録音出来るように、ナレーターに合わせてマイクの位置を調整します。
ナレーションブース内での
マイク位置調整

ナレーション録り開始です。VTRをスタートさせ、ディレクターのキュー(ランプの点灯やモニター画面にでる合図)によって、ナレーターは喋り始めます。
通常ナレーション録りは、作品をシーンごとなどで区切り、その1区切りごとにリハーサルをして本番を収録、という作業のくり返しで行われます。
録音中、「ミキサー」は、ナレーションの音量が均一に録音されるようにミキサーを操作しつつ、ナレーションの入るタイミングが良くなかった所やノイズが入ってしまった所などをチェックしておきます。
「アシスタント」は録音する場所を頭出しし、DAW、MTRの録音ボタンを押して「ミキサー」同様タイミングやノイズをチェックしておきます。

全てのナレーションを録り終えた後、「ミキサー」と「アシスタント」はディレクターと相談しながら、タイミングの悪かったナレーションの位置をずらしたり、ノイズを消したりしていきます。
ディレクターとナレーター
ナレ録り


MIX

MIX 全ての音素材の録音が終了すると、MIX作業開始です。DAWやMTRを再生し、録音された様々な音素材をミキサーで調整して、DAWやMTRの空いているトラックに録音するのがMIX作業です。この時、エフェクターを使用してリバーブ(残響)やディレイ(山びこのような効果)などのエフェクト(効果)をかけることもありますが、これは「音入れ」や「ナレ−ション録り」の時にする場合もあります。

MIX作業では、これまでの作業で別々のトラックに録音してきた効果音やナレーションなどの音素材を、ミキサーを使ってバランスよく1つにまとめ、空いているトラックに録音していきます。

MIXのやり方によってその作品の雰囲気や印象、完成度などが全く違ってくるので、MIXは「ミキサー」の一番大事な作業と言えるでしょう。

MIXが終わり、ディレクターのOKがでるとMIX作業終了です。
ミキサーとアシスタント

以下のreal audioファイルは、今まで説明してきたMA作業の工程を、実際に音として聞き比べていただくために用意したものです。右側の注釈を読んでからお聞き下さい。
1.素材音 音レベルが一定でなく、余計なノイズも入っています。
2.整理済み素材音 素材音を「起こし」の段階で整理したもの。レベルが均一になり、余計なノイズも消されています。
3.「2」+効果音 「2」で整理した音素材に音楽と効果音を足したものです。
4.「3」+ナレーション 「3」にナレーションを足したものです。全ての音素材がそろいましたが、まだそれぞれの音レベルがバラバラで、非常に聞きづらくなっています。
5.完パケMIX 「4」でそろった音素材をバランスよくMIXした完パケです。エフェクターもかけてまとめています。


戻し と 完成

MIXして出来上がった音を「MA前完パケ」の音声トラックにダビングする作業です。

これで作品は完成し、「完パケテープ」が出来上がりMA終了です。
「完パケテープ」は、TV番組であれば放送局に納品されオンエアーされます。販売用などのビデオ作品であれば、プリント工場やプレス工場に持ちこまれVHSやDVDとなって出荷されます。
 
MAは作品作りの最終作業であり、MAの出来によってその作品の全てが決まってしまう、といっても過言ではないほど、作品にとって重要なものです。
そしてMAの一番の魅力は、なんといっても、一つの作品を完成させる喜びを味わえる事でしょう。
しかしながら、MAは思う以上に地味な作業の積み重ねです。本当に音が好きで、音に対するこだわりがなければ、なかなか出来る仕事ではありません。一日中スタジオにこもって、時には次の日の朝まで作業することもあるので、根気と体力も必要です。
MAついて 
また作品はいろいろな人とコミュニケーションしながら作っていくものなので、人付き合いも大切です。
ただMAを始めたきっかけは、音楽が好きだから、映画が好きだから、と誰でもそんなものです。音に限らず、「モノ」を作り上げる喜びがわかる人なら、MAミキサーになれるのではないでしょうか。



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